約 1,974,333 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/865.html
朝食を食べ終えたルイズとジョニィは教室に入った。 石造りの教室にはたくさんの生徒と、様々な使い魔がいた。 生徒たちは二人が教室に入るとゼロがどうとか平民がどうとか言いながら笑い始める。 笑われてるみたいだけど、とジョニィが小声で聞くがルイズは嘲笑を無視するとそのまま席に向かっていった。 「ルイズ。一つ聞きたいんだけど…。なんだい?そのゼロって。朝も呼ばれてたよね?」 「あんたには関係ないわよ」 ルイズは不機嫌な声で答えると席の一つに腰掛けた。ジョニィも黙って隣に座る。 ちょうどそこで扉が開き、中年の女性が入ってきた。 「皆さん。春の使い魔召還は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのが楽しみなのですよ」 そう言いながらジョニィに視線を向ける。 「おやおや、また変わった使い魔を召喚したようですね、ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズがジョニィを見てとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ!召喚できないからってそのへんの平民を連れてくるなよ!」 一人の小太りな生徒がゲラゲラと笑いながら立ち上がった。なぜか彼の体には黄金長方形を見ることができない。 「違うわ!きちんと召喚したもの!ミセス・シュヴルーズ!かぜっぴきのマリコルヌに侮辱されました!」 「なんだと!?オレは風上のマリコルヌだ!」 二人が熱くなり始めたところでシュヴルーズは杖を振った。すとん、と二人が席に着き、ついでに笑っていた生徒達の口に粘土が押し付けられる。 まるでスタンド能力だ。ジョニィはあらためて魔法の凄さに感心した。 授業は滞りなく進行した。 内容は系統の説明やクラスなど基礎的なものらしく、ほとんどの生徒達はつまらなさそうに聞いている。 だが元の世界に戻る唯一の手段である魔法を学ばなくてはいけないジョニィは真剣に授業を聞いていた。 魔法初心者の彼にとって授業が基礎から始まるのはありがたかった。 シュヴルーズは『土』系統の魔法を教えるらしく、さっきから何度も『土』系統の魔法の重要さを説明している。 あまりの必死さに生徒達は若干引いているのだが。空気読めよ。 授業が進み、いよいよ実践となったところで唐突にルイズが話しかけてきた。 「ジョニィ。あんた…魔法も使えないのにそんな真剣に聞いてどうするのよ」 「だから言っただろ。僕には帰ってやらなきゃいけないことがある。そのためには魔法でもなんでも学んでやるさ」 「あのねえ…帰る方法なんてないって言ったじゃない。それに…」 「ミス・ヴァリエール! 授業中の私語は慎みなさい!」 そんな風に喋っているとシュヴルーズに見咎められてしまった。 「は、はい!すいません…」 「お喋りするほど余裕があるのなら、『錬金』はあなたにやってもらいましょう」 シュヴルーズがそう言って机の上の石ころを指差した瞬間、教室の空気が変わった。 真っ先にキュルケが立ち上がり反対する。 「先生!危険です!」 「なぜです?失敗を恐れていては何もできませんよ」 他の生徒達からも続々と反対の意見が上がるがシュヴルーズはまったく聞く耳を持たない。 一方、ルイズはこれはチャンスだと思った。 どうもジョニィは使い魔としての自覚がないらしい。 自分に対する尊敬とかそういう気持ちが微塵も感じられない。タメ口だし。 そんな彼がさっきから一所懸命魔法を学んでいるのだ。 ここで一つ魔法でいいところを見せればジョニィも見直すことだろう。 (この先100年間は二度と挑んで来たいと思わせないようにご主人様との力の差を見せてあげるわッ!) 「やります」 そう言ってルイズは立ち上がり、颯爽と教室の前へ歩いていく。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」 にこっと笑いかけるシュヴルーズに頷くと一呼吸置いてから呪文を唱える。 「承太郎さん!あなたの『スタープラチナ』だ!」 「まずいぜ…!もう少しだけ離れねーと…!」 「『魔法』を使わせるなーーッ!!」 「いいや限界だ!隠れるね!『今だッ』!」 「射程距離5メルトに到達しています!S・H・I・T!」 生徒たちが一斉に慌て始める。 ジョニィはルイズの実力を見るいい機会だと呑気に見ていたが、前の席の生徒が机の下に隠れるのを見てイヤな予感がした。 何かヤバイと思った瞬間、教室が光に包まれたのだ! 「うおおッ!?ジャイロォォーー!?石ころが「爆発」したッ!?」 ジョニィはルイズがなぜ「ゼロ」なのかをやっと理解したのだった。 めちゃくちゃになった教室の片付けが終わったのは昼休みの前だった。 罰としてルイズ一人で片付けを命じられてしまったため時間がかかってしまったのである。 もちろんジョニィも手伝った───というかほとんどジョニィがやったと言ってもいいだろう。 新しい窓ガラスを手配したのもジョニィだし煤だらけの教室にモップをかけたのもジョニィだ。 ルイズは教室の隅でいじけてただけみたいなもんである。 「ルイズ…僕のほうは終わったんだが」 「………」 無言。気まずい。 どうしたものかとジョニィがしばらく悩んでいるとルイズが口を開いた。 「…あたしがなんでゼロかあんたにもわかったでしょ」 そう呟いた。明らかに落ち込んでいた。 そしてなぜかその姿には見覚えがあった。 ───いいところを見せるどころか恥を晒してしまった。 きっとゼロの意味を知ってジョニィもわたしを嘲り笑う。 そして見捨てる。役立たずと。誰からも認められない「ゼロのルイズ」と。 そう思うと悔しくて泣きたくなってきた。 そしてついジョニィにキツく当たってしまう。 「まあ、君の実力はだいたい解ったよ。あの爆発の威力はスゴかった」 「…言いたいことがあるならハッキリいいなさいよ!笑いたいなら笑いなさい!」 「…?ハッキリ言ってるじゃないか。君の実力もゼロの理由も理解した。別に僕は笑ってないだろ」 ゼロという言葉に反応してルイズはキッとジョニィを睨みつける。 「そう言って…きっと心の中では笑ってる!どんなに努力しても誰からも認めらない! 誰からも見捨てられる!わたしを「ゼロのルイズ」だって!」 ルイズは半分涙声になりながら続けた。 そこでジョニィははっとした。 先ほどルイズに見た誰かの姿は───僕だ。 魔法が使えないせいで誰からも認められない、そう言って一人ぼっちでいるルイズの姿は 歩けないせいで暗い病院で一人で絶望していたあのころの自分を思い出させた。 誰も関心なんか払わない。みんな見捨てる。観にさえも来ない。それが僕の進んでいる『道』 そう思っていた自分にそっくりだった。 ジャイロはそんな僕の限界を打ち破ってくれた。 ならば彼女にも───「何か」が必要なのではないか。 自分の限界を打ち破る、無限へと続く黄金の回転のような「何か」が。 「勉強もした!練習もした!それでも…できなかった!貴族なのに!メイジなのに! 魔法が使えないメイジなんて誰からも認められるわけがないわ!わたしは…わたしは!」 今まで溜め込んできたものを必死に吐き出すルイズの言葉をジョニィは遮った。 「『できるわけがない』」 「え…?」 「他の誰かができても自分はできるわけがない。いくら努力したってできるわけがない。君は今そう思っている。だから限界を感じている」 ジョニィはサンドマンとの戦いを思い出す。自分もそう思っていた。黄金の回転なんか『できるわけがない』と。 「でも本当に出来ないのか?僕の意見を言わせてもらえば君はあんな爆発を起こせるんだ。だったら…君が気付いてないだけで…何か小さなキッカケで…それを見つければできるのかもしれない」 ジャイロが自分の身を犠牲にしてまで教えてくれた黄金長方形を見つけた自分のように。 「そのキッカケが『何か』はわからないけど…。『少しずつ』…少しずつ『生長』すればいいじゃあないか…。今はゼロでも…その『何か』を探して少しずつ『生長』して…そして、そうすれば…最後に勝つのはそうやって『生長』した人間なんだから…」 そう言ってジョニィは教室を出て行った。 自分の言葉が希望になるかはわからないが…それでも『何か』のキッカケになればいいと願って。 一人残されたルイズは呆然と教室の扉を見ていた。 ───今あいつは何を言ったのだろう。彼の言葉には経験に裏付けされた根拠があった。 笑われるものだと思っていた。見捨てられると思っていた。 だがジョニィはそうしなかった。わたしを認めて励ましてくれたのだ。今はゼロでもいいじゃあないかと。 そう思うとルイズは───ただ嬉しかった。 だが素直になれない性格とプライドの高さが災いして次にでてきた言葉は 「ななな、なによ!つ、使い魔のくせして偉そうに!ま、待ちなさい!」 照れ隠しにそう言うと赤い顔を隠してジョニィを追いかけるように教室をでていった。 ───今日の昼ごはんはちょっと豪華にしてあげてもいいかな。 To Be Continued =>
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7048.html
「武装錬金」より、「武藤カズキ」を召喚。 第零話 長いお別れ 第一話 新しい世界 第二話 イントロダクト・サーヴァント 第三話 ゼロのルイズ 第四話 使い魔カズキ 第五話 VS.ギーシュ 第六話 カウントダウン 第七話 王都トリスタニア 第八話 土くれのフーケ 第九話 破壊の聖石 第十話 掌握、決意、そして咆哮 上 下 第十一話 三本腕の悪魔 第十二話 ゼロの使い魔 第十三話 KNOCK KNOCK ... 第十四話 王女の依頼
https://w.atwiki.jp/kaeuta-matome/pages/1701.html
元ネタ:First kiss(ゼロの使い魔 ICHIKO) 作:ヤジオーディエンス Past timesまで持ち出す おまえの妙なTheory その頑迷に輪を掛けて 今日も突然怒り出す 僕が何をしたと言うの やむを得ないことだよね 毎日だよ! こんなことは やけにココに居づらくなってゆく もし嫁が ムッツリと黙り込んでも 僕はきっと 陰でそっと 息を殺してる ※Waste timeこの暮らしに 積もり積もったDiary また無茶に輪を掛けて おまえの態度変わるから Past timesまで持ち出す おまえの妙なTheory その頑迷に輪を掛けて 今日も突然怒り出す いつも嫁は予測不能 通常 異常 もうわからなくなる そんな僕が くたびれてぶっ倒れても 嫁はきっと 僕をもっと こき使ってくれる Worst timeまで待てない 二人の家はMisery その瞬間に意を決し 僕だけきっと逃げるから Past timesまで持ち出す おまえの妙なTheory その頑迷に輪を掛けて 今日も突然怒り出す もし嫁が 珍しく機嫌よくても 僕はきっと 陰でそっと 息を殺してる ※繰り返し 検索タグ アニメ フルコーラス 既男ネタ ヤジオーディエンス メニュー 作者別リスト 元ネタ別リスト 内容別リスト フレーズ長別リスト
https://w.atwiki.jp/moshinomatome/pages/19.html
あの夜。 ワルドから、あの少年が伝説に語られしガンダールヴであることを告げられた。 そして、彼が言うには、いつの日か私は歴史に名を残すような偉大なメイジになるそうだ。 馬鹿馬鹿しい御伽噺にしか聞こえなかった。自分の身の程は、自分が一番良く知っている。あの少年の馬鹿さ加減も良く知っている。 私達が伝説の生まれ変わりを演じられる理由など、どこを探しても見つかりはしない。 私がメイジとして大成することはないだろう。 人並みに扱えるようになれれば、それで十分だ。 そう言えば、そんな風に思えるようになったのは、いつの日からだろう。 考え込む私に向かって、彼は求婚した。 ふと、あの少年の笑顔が頭に浮かぶ。 目の前にいるこの男と結婚しても、私はあの少年を使い魔としてそばに置いておくのだろうか。 なぜか、それはできないような気がした。これが鴉や、梟だったら、こんなに悩まずにすんだのかもしれない。 もし、私があの少年を見放したら、あの子はどうなるんだろう。 キュルケか、それとも少年に施しを与えるシエスタとか……、誰かが世話を焼くに違いない。 そんなの嫌だ。 あの少年は、馬鹿で間抜けだけれど、他の誰のものでもない。 私の使い魔なのだ。 彼の笑顔も、彼の涙も、彼の優しさも、彼の心も、彼の体も、全て私のもの。 彼は私の使い魔なのだから、彼の全ては私のもの。 私はプロポーズの答えを保留した。 この男は、優しくて、凛々しくて、ずっと憧れていた。 求婚されて、嬉しくないわけじゃない。 でも、あの少年が心に引っかかる。 引っかかったそれが、私の心を前に歩かせないのだ……。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/39.html
魔法学校学院長室、ドッピオは決闘をしてからたまにここに来たりします 点前では使い魔の中で不思議な力を使うという噂が広まり学院長自らが調べるためと言うものですが ドッピオと学院長オスマン自身はここにとっての異世界、地球の話をしていることが多いのです 最初にドッピオの不思議な力、スタンドについても 「まあわしらには見えんし悪用さえしなければの。ただしまた決闘があるなら直接、貴族をそれで殴るのは勘弁しとくれ」 などといってお仕舞いでした 今日もまた異世界についての話をしていますが主だった事が話しきったので会話は弾みません 「おお、そうじゃ。お主の世界の人間がおったかもしれん」 会話を弾ませようとオスマン氏がとても重要なことをさらっと言いました 「そうですか・・・って、ええ?!」 さらっと言われたもので聞き逃しそうになりましたがそんな重要なことは聞き逃せません 「どこだかは知らんが「元の世界に帰りたい」と言ってた者がおったんじゃよ。おそらくお主と同じ世界だとは思うのじゃが」 「その人は今どこに?」 「死んだよ・・・。わしを助けた時には酷いケガでの、死ぬ間際まで元の世界に帰りたいとうわごとのように繰り返しておった・・・」 「助けた?」 「・・・ちいっとばかし爺の昔話に付き合ってくれるか?」 「もう30年も前の話なのかのう・・・ ある日わしは森にとある秘薬の材料を探しに行っていたんじゃよ しかし途中ワイバーンに襲われたんじゃ 死にそうだったところにその者が一撃でワイバーンを粉砕して助かったんじゃが」 「・・・・・・・」 「そのときにワイバーンを倒した一撃の反動が決定打になったのかその後は先に言ったとおりじゃ」 「すいません。いやな思い出を話させてしまって」 「なに言っとるんじゃ。爺に遠慮は不必要じゃよ」 そう言ってオスマンは紅茶を手に取った。話の最中にミス・ロングビルがおいてくれたものだ ドッピオも紅茶を口につけて話の一区切りを入れていた 「いただきます」 紅茶に口を付け一口飲むとドッピオは考えを巡らせ質問します 「なにか遺品とか残ってないんですか?」 「うむ、「破壊の杖」と言う彼の所持品だったものがある…」 ガシャン・・・ 破壊音はミス・ロングビルのポットを落とした音でした 「し、失礼しました。すぐに掃除を」 動揺しているのかその動きには落ち着きが無かった 「彼がわしを助ける時に使った魔法の杖らしきものなんじゃが・・・ 余りの破壊力の為この学院長室の下にある宝物庫にしまってあるのじゃよ」 「見れませんか?」 「鍵なくしちゃって・・・ゴメンネ!!」 手を合わせ片目を瞑る500歳にカップを投げたくなる衝動を押さえるドッピオでした 「魔法で何とかならないんですか?」 「スクエアクラスのメイジ数人は欲しいからのぉ・・・だがもしかしたら・・・」 「何か名案があるんですか?」 「壁をぶち抜けばいけるかも?」 「やっていいならやりますけど・・・」 キング・クリムゾンのパワーなら可能と考えたドッピオの考えは 「絶対ダメ!!」 両腕でバッテンを作った爺にさえぎられてしまうのでした 「なら、言わないでくださいよ。でもまあ、魔法が使える杖なんか僕の世界には存在しないから関係ないですね」 そう言いドッピオは紅茶を飲み干します。出された以上余す訳にはいきません 「お世話になりました。また来る時は有力な情報をお願いします」 「まぁそう焦るな若いの。また来い」 「仲が宜しいのですね」 ニッコリ微笑みながらオスマンに紅茶のお代わりを注ぐロングビル 「ほっほっ、なかなかおもしろいやつでのぉ。あいつと話していると若い頃を思い出すわい」 長い髭を触りながら楽しそうに話すオスマン 「それは良いことですね、オールド・オスマン。しかし人のお尻を触りながら言っても格好良さは三十分の一ですよ」 「痛て!!」 秘書にセクハラを軽くあしらわれているオスマンには学院長としての威厳もクソもありませんでした 9へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2466.html
前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 ルイズは久しぶりに上機嫌だった。 何かが良くなったわけでもない。午前中もやっぱり魔法は失敗してしまった。 それでもルイズの心は軽かった。 ここ最近ずっと味気なかった食事も、今はなんだかとても美味しく感じる。 康一が教室で言ってくれた言葉を思い出した。 そうだわ。わたし、まだ17なんだもの!これからどんなことがあるか分からない。 まだ自分の『運命』に絶望するのは早すぎる! 使い魔だって、最初はみんなと違ってたからがっかりしたけど、よく考えたら人間なんだから、猫や鳥を召還するよりずっと上等だわ。 ルイズは食事を終え、ナプキンで口元を拭いた。 午後は自習らしい。せっかくだから魔法の練習をしよう! そこに数人の男子が通りがかった。 そのうちの一人が、ポケットから小瓶を落としたので、ルイズは声をかけた。 「ちょっと。何か落としたわよ。」 ん?と振り向いた顔を見て、ルイズはゲッという顔をした。 ギーシュ・ド・グラモン。さっき教室でわたしに嫌味を言った、キザで嫌なやつ! 「なんだいルイズ。もう片付けは終わったのかい?」 ギーシュがいかにも嫌味な口調で言った。 ルイズは思わず怒鳴りそうになったが、我慢することにした。 確かに、自分の失敗のせいで彼にも迷惑をかけた。だからぐっと堪える。 「ええ。ミスタ・コルベールにもういいって言われたの。それより、その小瓶。あんたが落としたんでしょ?」 と、床に落ちている紫色の小瓶を指差した。 今度はギーシュのほうが、ゲェ~!!という顔をした。だが、瞬時に表情を取り繕うと、 「し、知らないね。それはぼくのものじゃないよ。適当なことを言わないでくれたまえ。」 と背を向けようとする。 「嘘!あんたのポケットから落ちたの見たんだから!いいから持っていきなさいよ!」 別にギーシュのことなんかどうでもよかったが、適当よばわりされたのは我慢ならなかった。 すると、ギーシュと一緒にいた友人達が、「おおっ!」と騒ぎ始めた。 「おい、ギーシュ!それってもしかしてモンモランシーの香水じゃあないのか!?」 「そうだ!この鮮やかな紫色の小瓶・・・間違いない!モンモランシーのだ!ギーシュ・・・お前モンモランシーと付き合ってるのか?そうだろ!」 「あ、あんまり騒ぐんじゃない!いいかい?彼女の名誉のために言っておくが・・・」 ギーシュが否定しようとしたとき、ルイズの後にあるテーブルから、一人の女の子が立ち上がった。茶色のマントだから一年生だろう。 その栗色の髪をした可愛い少女は、涙ぐんだ目でギーシュを見つめた。 「ギーシュ様・・・やはりミス・モンモランシーと付き合っておられたのですね・・・」 ぼろぼろと涙がこぼれる。 ギーシュは慌てて女の子の肩を抱いた。 「い、いやだな。ケティ。そんなつまらない勘違いで美しい顔を涙に濡らさないでおくれ。ぼくはいつだって君一筋なんだから・・・」 「へぇ~~~?君一筋・・・ねぇ。」 ギーシュはぎくりと固まった。ゆっくりと声をしたほうに顔を向けると、きれいな金髪の巻き髪をした女の子が立っていた。 「ギーシュ。あなた、やっぱり一年生の子に手を出していたんだ・・・」 ギーシュはケティの肩を抱いていた手をぱっと離した。 「ちち違うんだモンモランシー!彼女とはラ・ロシェールの森まで遠乗りをしただけで・・・。ああっ!その薔薇のように麗しい顔を怒りにゆがめないでおく・・・!」 その瞬間、バッチコーーン!と食堂中に響くいい音をさせて、ケティのビンタが飛んだ。 「ギーシュ様!最低です!」 そして泣きながら走り去っていった。 「ああっ!ケティ!」 思わず手を伸ばしたギーシュに、背後からドバドバとワインが振りかけられた。 ギーシュがゆっくりと振り向くと、モンモランシーはワインの空き瓶を床に投げ捨てたところだった。 「二度と私に近づかないで。」 凍りつくような声色でそれだけ言うと、つかつかと歩き去っていく。 要するに二股をかけていたらしい。ルイズは馬鹿なやつ。とつぶやいて立ち上がった。 ワインまみれで立ちすくむギーシュの横をすり抜けて出口へ向かう。 「待ちたまえ・・・!」しかしそこでギーシュがルイズを呼び止めた。 「・・・・なに?」 ルイズが振り向くと、ギーシュはルイズに薔薇の造花をつきつけた。 「君の軽率な行動のおかげで、二人のレディの名誉が傷ついてしまった・・・。どうしてくれるのかね?」 ルイズは薔薇を払いのけた。 「わたしの知ったことじゃあないわ。ギーシュ。二股かけてたあんたが悪いんじゃない。」 まわりの生徒達がやんややんやと騒ぎ立てた。 「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」 ギーシュの顔に赤みがさした。 「ぼくは君が呼び止めたときに、知らないといったはずだ。そこで引き下がっていれば、こんな騒ぎにはならなかった!」 ルイズは呆れた。心の底から呆れた。こんなやつが貴族を名乗っていいのだろうか。 だから馬鹿にした口調で斬って捨てた。 「あんたが二股をかけるのが悪いんでしょ。『青銅』・・・いや、『二股』のギーシュ?」 集まってきた人垣がどっと笑う。 ギーシュは思わず頭に血が上りそうになったが、それを堪えた。 相手は『ゼロ』のルイズだ。この僕が何をむきになることがある。 ギーシュはやれやれ、と溜息をついて見せた。 「まぁ、君のような似非貴族に、マナーを期待するのが間違いだったか。いいさ、行くがいい。『ゼロ』のルイズ。」 似非貴族!これ以上ルイズの心に突き刺さる言葉は他になかった。 「・・・ヴァリエール家を馬鹿にするならタダじゃおかないわよ、ギーシュ。」 ルイズが声の震えを押さえつけるようにして言うと、ギーシュはふふん、と笑った。 「僕はヴァリエール家を馬鹿にしてなんかいないさ。ヴァリエール家はトリステインでも最も由緒正しき家柄の一つだ!僕はとても尊敬しているよ!」 ただね・・・、ギーシュは口元をゆがめた。 「君は別だ、ルイズ。由緒正しきヴァリエール家に相応しくない落ちこぼれ。未だに魔法の一つも使えない似非貴族とは君のことさ。」 ギーシュはルイズを指差した。ルイズはその指に、自分の心臓を抉られたように思った。怒りと悲しみで言葉が出てこない。 「今日も授業をぶち壊してくれたね。君のような似非貴族がメイジのふりをしているから、僕たちはとても迷惑しているんだ。」 ルイズを助けに入る者はいない。みな、少なからずもルイズに思うところがあったのだ。 ところで・・・。ギーシュは、ルイズの耳元で囁いた。 「君・・・本当にヴァリエール公爵家の子どもなのかい?」 ルイズの頭が真っ白になった。気がついたときにはギーシュに杖を突きつけていた。 「決闘よ!!」 ギーシュは一瞬ぽかん、としたようだったが。やがてぷっと吹き出した。 周り中がどっと笑い出す。 「あはははは!ルイズ!君は自分が何を言っているのか分かっているのかい?君が僕と決闘だって!?」 ギーシュが馬鹿にしたようにいった。ルイズは震える声で答えた。 「そうよ!わたしはあんたに決闘を申し込むわ!」 ギーシュは、笑うのをやめた。でもねぇ・・・ 「この学院では決闘は認められていないんだよね。特に『貴族と貴族の決闘』はね・・・!だから、君がこうお願いするなら受けてもいいよ。」 芝居がかった口調で続けた。 「『今まで貴族のふりをしていてすみませんでした。わたしはしがない平民ですから決闘を受けてください』とね。」 口笛が飛んだ。騒ぎを聞きつけてあつまった人垣から「いいぞー!やれやれー!」と野次が飛ぶ。 くやしい!くやしい!くやしい!くやしい! ルイズは手を裂けんばかりに握り締めた。 どうがんばっても、わたしよりこいつのほうが貴族らしい・・・。そんなことくらい自分が一番分かっている。 貴族にも、平民にもずっと馬鹿にされてきた!誰もはっきりとは言わなかったが、ギーシュが言っているのは、ずっと自分が思ってきたことなんだ。 わたしはギーシュが憎いんじゃない・・・反論できない自分が情けないんだ!! 涙で視界がゆがむ。座り込んでしまいそうだ。 でも、こんなやつの前で泣いたりするもんか!泣くもんか!泣くもんか!泣くもんか! ルイズは必死に唇をかみ締めてギーシュを睨みつけた。 そのとき、高らかに声が響きわたった。 「それなら、ぼくが決闘を申し込むよ!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド ざわめく群集をかき分けて、ゆっくりとギーシュの前に立ちふさがったのは、『ゼロの使い魔』と呼ばれた、小さな平民の男の子だった。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/17.html
(…どうしてよ? くやしかっただけなのに 私は、ただッ…) そろそろ気にしてもいいだろう 召喚した張本人は何をやっているのだろうか? ゼロのルイズこと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 彼女はペタリ座って事態を静観していただけだったが 決して頭が空ッポなわけでもなかった ルイズは普段バカにされていた 魔法成功率ゼロ%だから「ゼロのルイズ」 なのにスゴク負けず嫌いな彼女は 今回の使い魔召喚でキュルケのハナをアカしてやろうと決意していた それが「鳥の巣」である まあそこまではよかった よくないがよかった まさか自分がいきなり殴られてブッ飛ばされるとは思ってもみなかったのだから そして今、呼び出したあの使い魔が他の皆の使い魔やキュルケをキズつけている よくはわからないが痛そうだ 骨が折れてるかもしれない ふと自分の胸を見る さっき殴られたばかりだったが今やっと気づいた …ン!? えらいことになっている 胸がナイのは元々だ ムカツクが自分でもわかっている 問題にすべきは、胸元にあったはずのマント留めだ 割れてもいないし砕けてもいないが原型を留めていない グニャルンと曲がりくねっている 保存が悪くて液体が染み出してきた粘土細工のように タマゲたことに一部、シャツとも同化しているッ (コレに殴られたキュルケの手は…どうなってるの? まさか…全ッ然、動いていない 中で骨がグチャグチャにされた? あんなの、私の手に負えるのッ…) おそろしかった あれを呼び出したからこんなことになったのだ 爆発ズドンですむような笑い話ではない マント留めが元通りの形に戻るなんて思えない とりかえしのつかないケガをキュルケや他の使い魔に負わせているのだ ルイズの心は罪悪感と「ああ、やっぱりあたしはダメだ」的な敗北感一色に染まっていた クラスメートにはチョットやソットでは懲りない女と見られていたし ルイズ自身も意地だけを財産にしてきたが それも、これでポッキリ折れてしまいそうだった …グス スンッ… (泣くな、私… 泣いちゃ駄目…) それでもポタポタこぼれ落ちてくるのは止まらなかった (…アー、アー、みっともないこと!!) 男の攻撃でまたも地ベタに転がされたキュルケは 生徒達の中で泣いている宿敵に向かってツバを吐いた 血が混じっているので吐き出さないと気分が悪かった (アンタ、やっぱり「ゼロ」なの…? 空イバりだけのくッだらないヤツだったの? ちょっとは見せてもいいでしょ、甲斐性ってやつ) キュルケの多彩な趣味のひとつが ルイズのイヤがる顔を見ることだった だが彼女は極度のワガママでもある 泣き顔を見せられても不愉快千万ッ!! ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (アンタが私に見せていいのはくやしがってる顔だけよ、ルイズ) だから、あの使い魔を生け捕って目の前で自慢してやる 地団駄踏ませてギャンギャンわめかせてやる これはいい 今から楽しみだッ 「言ったはずですわミスタ・コルベールッ 引っ込んでいろとッ!!」 「…ぬぅッ?」 そんな自分の快楽主義に水を差すタコをキュルケは許さない 再度の突撃で生徒達から離れた男を抹殺すべく コルベールは呪文の詠唱を始めていたのだ 二人、目が合う ギン わずかな睨み合い 平和ボケした貴族にはない眼光 コルベールとてただのハゲチャビンではなかった キュルケも見誤っていたらしい 一瞬気圧されては認めざるをえなかった 「…次で終わりますもの、余計な手をわずらわせることもありませんわ」 「二言はないね、ミス・ツェルプストー」 「くどいですわよ、ミスタ・コルベール」 対等な契約 こんなことになるはずではなかったが 単にそれだけのことだった 次でケリをつければいい、ただそれだけ… ギーシュに目配せをする あれで一応、生徒達の最前列に踏み止まっているのだ 逃げたりはしていなかった だが、言いたいことは山ほどあるらしい 「ミエを張らなくてもそこに立っていられるキミがうらやましいよ、ミス・ツェルプストー 実戦経験が豊富なんだね、よくわかったよ」 「…何が言いたいのかしら、ミスタ・グラモン」 「そんなキミがそれだけこっぴどくやられているんだぞォォーッ あんなパワーにスピードッ 射程距離なんか全然弱点じゃあなかった あの…平民相手に足下を石で固めて何になるっていうんだ すぐに壊して抜けてくるぞッ!!」 ギーシュの言うことは正しい 全身を岩で固めたところで動きを封じられるか怪しい相手だったのだ だがそれでもなお、あの男は「人間」なのだ だから 「あらギーシュ、それがいいんじゃない」 「何がいいもんかっ 早くミスタ・コルベールに任せて…」 「だからサイコーなのよ あのパワーにスピードが…」 ペロッ 自らの上唇を軽くなめるキュルケ 「いいから言われた通りにやりなさい そんなに『あのこと』バラされたい?」 「うぐっ…」 「『足元』よ、しっかり固めてね」 「ち、ちょっと待て、ぬかるみは…」 ハッ!? そのときギーシュは気がついた 『土×2』ッ!! キュルケの背後、数メイルに渡って 広く、きわめて浅いぬかるみに変わっていたのだ 草などはそのままだから、遠くからのパッと見ではわからないッ (いつの間にこんな…まさかッ さっき殴られたとき、スデに詠唱は完了していたのか 火を放ってから殴られるまでツッ立ってたのも これに気づかせないためだったのか 殴られる瞬間に発動することで、あいつはこれを完璧に見逃したッ!!) 「ファイヤ…ファイヤッ」 バフッ バウッ わずかな時間差と方向差をかけて火×1を二発 男に向けて逃げ場のないように撃ち込むキュルケ 「ファイヤ、ファイヤ、ファイヤァァァーッ!!」 ドボォオ 次々撃ち込む もちろん魔法とて代償なしには使えないのだ トライアングルメイジとはいえ、たとえドットレベルでも こうまでむやみに乱射しては弾切れなどあっという間ッ キュルケは殺すつもりで狙い撃っていた どのみち、作戦に失敗すればあの男は死ぬことになるのだ コルベールは優しくないようだから 「さっさと来なさいッ このフヌケぇぇぇぇ――ッ!!」 このモーレツな火球の雨あられに 一度は回避を決め込んでいた男も根負けした 反撃せねば焼き殺されてしまうッ ドムゥ 男の足から土煙が上がり、 そしてまたキュルケは殴り飛ばされていった ドボ ズドッ ドッ ズドボッ 地面上を何度もバウンドし、学園全体を覆う城壁まで飛んで―― ギュン ガシッ ブワワッ 先回りした誰かに受け止められた 青髪メガネの仏頂面ッ そいつは鳥の巣男に劣らない速度で飛び出し キュルケを受け止め見事に減速してみせた 「…あら、タバサ」 「……」 タバサと呼ばれたその女は特に何も言わず 黙ってキュルケに肩を貸す 「ホントにカワイイわね、アナタ♪」 スリスリ そのまま頬をすりつけられると、タバサは嫌そうに顔だけ押しのけた 戻れば決着はついていた ギーシュはうまくやってくれたのだ 二回目の攻撃の時点で足からの着地に成功していた男は 三回目でも問題なく「足から」着地し…その足を固められた 着地というのは足全体をクッションに見立てて行うもの 足首から下をいきなりギッチリ固められた男は全力で前につんのめった 「足首は固まったまま」!! 結果どうなるか 「UGUUUUuuuuuuu…」 そこに全てのパワーとスピードを乗せてしまった男の足首は いともあっさり折れてしまった 「これでもうほとんど動けないって寸法…『無力化』だわね」 これ以上逃げ回ったり抵抗しようというのなら 腕や膝で這い回らなければならないということ 今までより格段にノロければ恐れるに足りなかった 近寄らなければ万事解決…魔法で拘束する手段も、こうなればいくらでもあった 「にしてもブッソーな使い魔だこと 冷静に襲いかかられてたらどうなっていたか…」(トチューでヤル気なくしてたみたいだけど) 「……」 タバサは相槌も打たなかった 5へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/562.html
一人の少女の挙動に、その場にいたすべての人間が注目していた。 その少女はルイズ。またの名を『ゼロのルイズ』。 この二つ名自体に相当の侮蔑の要素が入っていたが、口さがのないものはさらに別の名で呼んでいた。 『ヌ』で始まる4文字の名で・・・。 「気をつけなさい。爆発はいつもの規模とは限らないわ。もしかしたらこのあたりまで爆風が届くかもしれないわ」 赤い、火のような色の髪の毛をなびかせた少女、キュルケが級友たちに注意を促す。 その言葉に、ルイズを囲む人の輪が3歩ほど後退する。 「これから起こる出来事は・・・」 キュルケがしみじみと口をひらくが、その先は言葉にならなかった。 キュルケ(毎度のことだからずっと昔から知っている出来事・・・ そう・・・私は・・・ずっと知っていた・・・私はこいつの失敗魔法を入学したときから知っていた・・・このタバサも) タバサ(・・・・・・・・・・・・) キュルケ(予想していなかったことではない・・・入学したときからいつか別れることになる相手として・・・ 私たちクラスメイトは ルイズといつか別れることを知っていた・・・・・・) モンモン(関係がない・・・ヴァリエールの召喚失敗に・・・結果、退学を言い渡されることに・・・ 私の人生には関係がない・・・) ギーシュ(今・・・見えてるこの色は・・・ モンモランシーが「白」の下着を身に着けているということだ・・・キュルケは「黒」! モンモランシーは「白」 雨上がりの水溜りに はっきりと写って見えるぜ! おっきした下半身にさらに血が集まってくる 「前屈みのポーズ」で僕はいるッ!) クラスメイトたちの視線。 ある者はルイズとすごした一年間を懐かしみ、ある者は・・・ルイズには興味なさそうに本に視線を向け ある者は「かわいそうだけど、明日の朝には荷物をまとめて寮から追い出される運命なのね」ってかんじの視線を向けている。 そういった視線を感じ、ルイズの呼吸は自然と荒くなる。 ルイズ「し・・・始祖様ァ・・・私はあなた様の作り上げた系統魔法を練習してないわけじゃないですから~~ あなた様の作り上げた系統魔法が私にも使えると確信しているからこそ、使い魔召喚の儀式を行うんですゥゥゥ 香水のビンを拾ったら決闘が起こるってことと同じぐらい確信していますゥ・・・ そこのところわかってくださいねェェェ~~~」 「つべこべ言わんとさっさとやらんかァーーー!」 息を荒げながらうだうだと言うルイズの態度に、頭髪のさびしい教師が一喝する! ルイズ「神聖で美しく、そして、強力な使い魔様~~~ フェッ フェッ 私のことを馬鹿にするやつらをぶっ殺してやっておくんなさいましよ~~~~~」 ルイズは召喚の呪文を唱えると杖を一振りする! ドッグォーz_ン!! 案の定、ルイズが杖を振ると爆発が起きた。 その爆発は普段の爆発よりさらに大きく、十分な距離をとっていたつもりのクラスメイトたちが顔をしかめる。 そして、爆発の中心地ではもうもうと土煙が舞う。 キュルケをはじめ、ほぼすべてのクラスメイトたちが土煙が晴れるのを注視するッ! 案の定魔法は失敗して、煤にまみれたルイズが一人立っているのか・・・。いや案外変なものを呼び出すかもしれない。 まともな使い魔を召喚するという予想は圧倒的少数派で、必然的にオッズも高い! 頭髪のさびしい教師などは、頭皮に栄養を与える秘薬を買い込んでしまって今月はピンチなので、祈るように見ていた。 皆が土煙を注視する中、ただ一人! ギーシュ・ド・グラモンは別のものを見ていたッ! それはルイズの起こした爆風によってその位置を変えた水溜りッ! 位置が変われば、当然映し出すものも変わる! その水溜りには、いつも教室の隅で本を呼んでいる無口な少女のスカートが写っていた。 (タバサか・・・正直好みではないが、薔薇はすべての女性のスカートの中をのぞくもの・・・。 それにあの無口な少女がどんな下着を身に着けているのか、少し興味があるぞ!) その素敵な好奇心がギーシュに奇跡を見せたッ! そして、ギーシュが奇跡を見たのと同時に、土煙も晴れていた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・ 土煙が晴れ、そこにいたものは・・・ルイズ! 多くの生徒たちが予想したとおりそこにいたのはルイズただ一人! キュルケ「え!?」 タバサ「!?」 モンモン「え!?」 ギーシュ「!!!!!!」 予想通りであるはずのその光景に、クラスメイトたちは驚きの声を上げ、もしくは声にならない声を上げた! ギーシュただ一人だけは別の理由で絶句していたが・・・ 「召喚されたのは・・・私だったァーーー 今召喚の呪文を唱えたのにィ~~~」 そこにいた、いや、そこにあったのはルイズ! いや、ルイズだったもの!! 6つに切り分けられたルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールッ!! 「な・・・なにィー ど・・・どうしてルイズがバラバラにッ! 私は一瞬たりとも土煙から目を離さなかったッ!」 キュルケは自分の目に写る光景が信じられないという風に声を荒げる! そしてギーシュも自分の目が信じられなかったッ! 「ババくさい肌色の下着だとか! 大胆な紐だとかじゃあだんじてねー どう見てもはいてないッ!」 肌の色と同化してるのでも、布の面積が小さいのでもないッ! 布の面積がゼロッ! ゼロのタバサッ! 自分の見たものが信じられず、思わずタバサの顔を凝視するギーシュ。 「はいてないッ!?」 マリコルヌはそんなギーシュの言葉を聞き逃さなかった。そしてそれは他の男子生徒にも広がる。 ドドドドドドドドドドドドドド 男子生徒一同、プラスコッパゲが、ギーシュの「はいてない」という言葉と、ギーシュの視線が向かう先を理解するッ! ドドドドドドドドドドドドドド タバサ「野郎・・・面白くなってきた・・・」 ルイズ・・・・・・死亡 キュルケ・・・・・・自分の部屋に戻って二時間眠った。目をさましてからしばらくしてルイズが死んだ事を思い出し・・・泣いた 男子生徒一同・・・・・・タバサのエアハンマー・オラオラをくらい再起不能 タバサ・・・・・・見られるかもしれないスリルがやめられない DIO様・・・・・・誰も相手してくれないから城に向かった トリステイン・・・・・・1年後、ハルケギニア中から死都と呼ばれることになる ゼロのタバサ 完!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/53.html
結論から言うと私は外で食事をさせられた。周りには他の生徒の使い魔がいる。 外に出された理由は私が食事中に吐いたからだ。初めての食事を胃が受け付けなかったらしい。 ルイズはすぐさま私を外に追い出した。その後。何とか我慢して食事を食べる。パンも流動食だと言えるほど噛んで食べれば吐くほどではない。が、やはり体の中に違和感があるのは禁じえない。これからは人間が何をしなければいけないか考えなくてはいけないな。 いつまでも幽霊の常識じゃいけないってことだ。 食事が終わる頃生徒たちが食堂から出てくる。私の方をみて笑う生徒もいる。さっきのことだろう。 そう思っているとルイズが出てきた。 「あんた何してんのよ!恥かいちゃったじゃない!」 会った瞬間怒鳴ってくる。 「調子が悪かったんだ」 当たり障りのないことを言う。食事をしたことがないと言ったら二度と食事させてもらえなくなるだろうな。 「あんたの体調なんて聞いてないわ!罰として昼食抜きね!」 まぁ昼食だけならさして問題はないだろう。 そして教室へ向かう。ルイズと私が教室へ入ると既にいた生徒が一斉にこちらを見る。 そしてクスクス笑い始めるた。特に気にするようなことではない。 教室を見回す。石で出来た大学の講義室みたいだな。 生徒を見るとやはり使い魔を連れている。 フクロウ、ヘビ、カラス、猫、目玉、六本足のトカゲ、蛸人魚etc、、、 ルイズが席に座る。私も席に座り帽子を取る。ルイズが睨んでくるが無視する。どうせ私は床に座れとか言うのだろう。 ルイズが何か言おうとする前に扉が開き中年の女性が入ってきた。ローブは紫色で帽子を被っている。きっと彼女が先生なのだろう。 彼女が春の使い魔召還の祝辞を述べる。先生はシュヴルーズというらしい。 「おやおや。変わった使い魔を召還したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズは私を見てとぼけた声で言う。教室が笑いに包まれる。 ルイズは俯いている。シュヴルーズは笑いを取るために言った冗談なのだろうがルイズが傷つくのは考慮に入れてないようだ。 「ゼロのルイズ!召還できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 誰かがそう言う。するとルイズが立ち上がり怒鳴り返す。 そこから言い争いが始まる。また『ゼロのルイズ』だ。どうやら誹謗中傷の類らしいな。 シュヴルーズが杖を振ると、言い争っていた二人は席に座り静かになった。魔法は便利だな。 シュヴルーズが二人を叱る。 「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」 マリコルヌと呼ばれていた彼ががそう言うと笑いが漏れる。 シュヴルーズがまた杖を振ると笑っていた生徒の口に赤土の粘土が張り付いた。 「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」 シュヴルーズは厳しい顔でそういった。 しかし発端を作ったのはお前だろう。 「では授業を始めます」 話しを聴く限りだとこの世界では魔法が科学技術らしい。ゆえにそれを使える貴族が権力を持つということか。 いや、魔法が使えるから貴族か…… こいつらが魔法が使えなくなったらどうするんだろうかね? シュヴルーズが杖を振ると石が光る。光が治まると石は金属に変わっていた。 つくづく魔法は何でもありらしい。 6へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2201.html
ゼロと使い魔の書 第一話 地球にひっぱられて、上着から体がぬけた。仗助のいる屋根が遠ざかり、茨におおわれている赤煉瓦の壁にそって落下した。 八角形のドームと七つの尖塔をもった[茨の館]の上空につよい風がふいて、…… 目を開くと、鋭い日光に目を刺され僅かに眉を顰めた。 自分の身に起きた一番最近の記憶は、自らの存在意義でもあった「やるべきこと」が終わり、幕引きを行おうとした最後の最後で東方仗助との死闘に敗北し、 全身の骨を砕かれ茨の館から落下した。それで間違いない。 ならここはどこなのか。上半身を起こし、そして怪我が治っていることに気がつき、自分の目の前に広がる光景に言葉を失った。 緑色の海だった。 微かに吹く風が草を揺らし、草原は一つの生き物のように自身を波打たせていた。 神はいない。自分はそう考えていたが、どうやら単に怠慢で残酷で、そして気まぐれだったためにいないと勘違いしていたらしい。 自分は肉体という魂の枷から放たれてようやく、行きたいところに行かせてもらっているのだ。 ここがどこで、なぜこんなところにいるか、疑問は瑣末なものであった。 ただ、草原を眺めていた。 どれほどの時間が流れたか。 突然、背中に衝撃を感じ、前のめりに地面に突っ伏した。細々とした草が顔をくすぐった。 「平民のくせに!無視するなんていい度胸じゃない!」 振り返るとピンク色の長髪を揺らした少女が仁王立ちしていた。腕や胴回りなどはかつて自分に好意を抱いていた異母妹と同じくらい、ドーナツの輪をくぐれそうなほど細い。 その少女と自分を、黒いマントを羽織った少年少女が憐憫の情を含んだ嘲笑を浮かべ囲んでいた。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出して、しかも無視されちゃ形無しだな!いや、『さすがゼロ』と言うべきか?」 誰かの一言で、嘲笑は哄笑に変わった。 「ミ、ミスタ・コルベール!もう一度、召還のやり直しを要求します!」 少女は最後の希望、という表情で、周囲の中で唯一笑っていなかった中年男に言った。 「ミス・ヴァリエール……こう言ってはなんですが、自分を知りなさい……もう一回やる時間が……あると思うのですか?今のあなたに」 温厚そうな中年男は、しかし苦りきった顔で少女に言った。 「それがあなたの使い魔です。契約しなさい」 中年男に負けず劣らず嫌悪の表情を浮かべた少女は、首を振りながら自分に近寄ってきた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 唇の動きからいって、そう言ったのだろう。耳では聞き取れなかったほど早く小さく呟かれていたが、唇の動きを読める自分にとっては口元が視界に入っていればよかった。 少女は体が触れるぎりぎりのところまで近づくと、首をそらし自分を睨み上げた。 「屈みなさい!」 膝を折ると、少女は唇を重ねてきた。 「・・・・・・終わりました」 少女が呟くと同時に、左手の甲に熱を伴う強烈な痛みが走った。 左手を切り離さなければ死んでしまう、と思ったところで熱は引いていった。 見ると、不思議な模様が左手に刻まれていた。 「あんた、名前は?」 「……蓮見琢馬」 ここはどこで、目の前の人間達はなんなのか。 考えなければならないことが山積みであったが、自分には関係なかった。 見渡す限りの草原に、自分は立っている。 その事実の方がはるかに重要だった。 前ページ次ページゼロと使い魔の書